西 木

市指定無形民俗文化財

上桧木内の紙風船上げ

武者絵や美人画が描かれ、灯火をつけた巨大な紙風船が、きらめく星々のごとく真冬の夜空に舞う年中行事です。

この行事の始まりを書き溜めたものはありません。伝説では江戸時代の科学者である平賀源内が、銅山の技術指導に訪れた際に、熱気球の原理を応用した遊びとして伝えたとも言われています。

以前は五穀豊穣や家内安全を願う「虫焼き」(田圃に稲わらを積み火をつけるもので、どんと焼き、天筆とも呼ぶ)と同時に行われ、民族信仰の遺産と位置付けられています。戦争をはさみ一時期中断したこの行事も、地元上桧木内の有志による熱心な取り組みにより、昭和49年に宮田で復活し、秋田県を代表する冬の風物詩となりました。

紙風船の構造

文字通り、紙風船は紙でできています。昔は習字用の半紙を使用していましたが、巨大化が進む近年は、幅1メートルほどの業務和紙を使うようになりました。この紙を貼り合わせ、長さ3メートルから8メートル(大きいものでは12メートル)の円筒形を作ります。上部の口は大きさに合わせた紙で熱気が逃げないよう封をし、下部の口には、直径1メートルから3メートルほどの竹製の輪を取り付けます。

この輪に紙風船の揚力源となるタンポ(石油を染み込ませた布玉)を固定して出来上がり。紙風船の制作は、打ち上げ本番2ヶ月程度前(通常は12月)から始まります。上桧木内8つの集落では、時期が来ると老若男女が各集落会館に集まり、紙の裁断から絵柄の選定、描き方といった一連の作業を協同で進めます。

四方を山に囲まれた上桧内地区では、稲作と山仕事が古くからの産業だったため、以前は「五穀豊穣」や「無病息災」を祈願することが多かったのですが、最近は「家内安全」や「商売繁盛」、「交通安全」「合格祈願」もを祈願するようになりました。紙風船は、各自がその年への思い・願いを託し、天に声が届くようにと真冬の夜空に打ち上げます。

詳細情報
住所 秋田県仙北市西木町上桧木内字大地田(紙風船広場)